35.二度目のSOS

15/19
前へ
/848ページ
次へ
「あの、(そう)ちゃん、もう大丈夫だから降ろしてもらっても……いいかな?」  キッチンを抜けて、そのまま廊下に出ようとした(そう)を、結葉(ゆいは)が恐る恐ると言った具合に呼び止めて。  まだ少し涙に潤んだ瞳で懇願するように見上げてきた。 「ホントに……平気か?」  (そう)としてはつい今し方の、グッタリした結葉(ゆいは)の姿がどうしても頭から離れない。  手を離してしまったら、この温もりをまた奪われてしまうのではないかという恐怖が頭の片隅でわだかまって(おり)のように凝り固まっている。 「うん。平気……!」  なのに結葉(ゆいは)が曇りのない目で(そう)を見つめてコクリと頷くから……。  (そう)はゆっくりと結葉(ゆいは)を床に降ろした。  結葉(ゆいは)の足が地に接したと分かっても、もしもに備えるみたいに結葉(ゆいは)を包み込むように回した腕を離すことがなかなか出来なくて。 「(そう)ちゃん……?」  そっと離せないままの手に触れられて、結葉(ゆいは)に〝ホントに平気だよ?〟と言外に含まされる。
/848ページ

最初のコメントを投稿しよう!

738人が本棚に入れています
本棚に追加