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結葉が腕の中、オロオロと身じろいで何か言おうとしたのを、ギュッと腕に力を込めて言わせないようにすると、想は大きく息を吐き出して結葉から腕を離した。
「ごめんな? 急に。俺、お前にいつかこの気持ちを伝えなきゃってずっと思ってたんだ。なのに言えずにいる間に色々あり過ぎて時機を逸しちまってた。……さっき結葉が目を開けないのを見て……いつかなんて来る保証はねぇよなって……今更だけど気付いたんだ。だから――」
言わせてもらったのだと、想は結葉をじっと見詰める。
伝えたい言葉を伝えられないままになるのは嫌だ。
だけど、結葉がそれに〝今すぐ〟応える必要はないのだと言外に含ませる。
「想ちゃん。知ってると思うけど……私、すっごくすっごく不器用なの。――だから」
結葉が、そんな想を見つめ返して、ほんの少しだけ困った顔をして微笑んだ。
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