36.終止符

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 結葉(ゆいは)はもう自分の手が決して届かないところに行ってしまったんだと実感した偉央(いお)は、結葉(ゆいは)の意識が戻ったのを確認した後、ふらふらとした足取りでマンションを出て。  気が付いたら『みしょう動物病院』にたどり着いていた。 (僕には結局ここしかないのか――)  でも、そこがあるだけマシなのかも?とも思った偉央(いお)だ。  ふと視線を転じれば、駐車場には車が数台しかおらず、入口前に『午前の診察は終了しました。午後は十六時から診察いたします』という立て看板が出されていて、中が見えないようロールカーテンが下ろされていた。  偉央(いお)はぼんやりと(ああ、午前の診察が終わって、昼休憩に入った辺りか)と思う。  みしょう動物病院では、午後は十六時までオペや往診などで、外来の診察はない。  スタッフたちは皆、今頃昼休憩などでのんびりしている頃だろう。  偉央(いお)は裏口に回ると、ロックを解除して建物内に入った。 「あれ?……御庄(みしょう)先生?」  そこで、たまたまトイレに行っていたらしい加屋(かや)美春(みはる)に見咎められてしまった。
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