36.終止符

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「今日は体調が悪くてお休みされたんじゃ……?」  言って、偉央(いお)の様子が明らかにおかしいことに気付いたらしい美春(みはる)が、駆け寄って来て偉央(いお)をそっと支えてくれる。 「まだフラついていらっしゃいますよ? 無理しちゃダメじゃないですか。すぐに帰って家でゆっくり寝ていて下さい」  言って、偉央(いお)を見上げてから、ハッとしたように「……もしかして、ご自宅で何かありましたか?」と眉根を寄せた。  美春は小柄な結葉(ゆいは)と違って身長が一六〇センチちょっとある。  一七五センチの偉央(いお)よりは十数センチ低いけれど、結葉(ゆいは)に感じるような身長差は感じない。  それでだろうか。  別に間近というわけではないのに、自分を見上げてくる顔の距離が近いなと思ってしまった偉央(いお)だ。  ここにいるどのスタッフよりも――いや、言ってしまえば結葉(ゆいは)よりも長い付き合いだからだろうか。  つい彼女には気を許して本音をポロリ、ポロリと断片的にではあるけれどこぼしてしまっていた偉央(いお)だ。
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