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「あ、あの……先生?」
(御庄先生はいま、何て言ったの?)
美春は偉央の言葉が信じられなくて、固まってしまう。
「急にこんなことを言われても戸惑うよね。ごめん……」
謝る偉央に、美春はハッとして問わずにはいられなかった。
「あ、あのっ、奥様は――」
(もし殺してしまったと言われたら、自分はどうしたらいいのだろう?)
頭の中がグルグルして、座っていなかったらきっと、美春はその場にくず折れていたと思う。
「前に話したことあったよね。結葉の幼馴染みの男。彼が来て僕を止めてくれたから……彼女は無事だよ」
偉央の言葉に、美春はホッとして今度こそ椅子からずり落ちて床にくず折れた。
***
「妻が出ていった理由、僕、美春にもちゃんと話していなかったよね」
偉央は小さく吐息を落とすと、床に座り込んだままの美春をじっと見つめてきた。
「立てる?」
聞かれてコクッと頷いて何とか椅子に座り直したけれど、美春の心の中はぐちゃぐちゃで、収拾がつかない。
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