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「僕は……結葉を失いたくなくて……鎖に繋いで監禁していたんだ。彼女は……そんな生活に耐えきれなくなって僕の隙をついて逃げ出した」
「え……?」
「――それが、妻が出て行った本当の理由だよ」
そう続けられて、美春はどう反応したらいいのか分からなくて。
「最低……だよね……」
なのに偉央が悲しそうにポツンとつぶやいた瞬間――。
「最低? 私は逆に奥さんが羨ましいって思ったよ? だって偉央、私にはそこまでしてくれなかったもの」
気が付いたら、自分でも意味がわからないことを口走って、偉央に驚いた顔をさせていた。
***
マンションでの一件があったからだろうか。
偉央と結葉の離婚は、ふたりの協議に想が同席する形で割とすんなり進んで。
偉央は結葉に財産分与とは別に慰謝料を上乗せすることを提示してきた。
結葉が、偉央のモラハラやDVで数年間苦しめられたことは明白だったから。
だけど結葉は偉央が提示した金額が相場より大きすぎることに渋って、そこの話し合いに一番時間を要した感じだった。
「絶対にっ。以前送っていただいたこの小切手の金額もそこから差し引いて下さいね?」
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