36.終止符

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「僕は……結葉(ゆいは)を失いたくなくて……鎖に繋いで監禁していたんだ。彼女は……そんな生活に耐えきれなくなって僕の隙をついて逃げ出した」 「え……?」 「――それが、妻が出て行った本当の理由だよ」  そう続けられて、美春(みはる)はどう反応したらいいのか分からなくて。 「最低……だよね……」  なのに偉央(いお)が悲しそうにポツンとつぶやいた瞬間――。 「最低? 私は逆に奥さんが(うらや)ましいって思ったよ? だって、私にはそこまでしてくれなかったもの」  気が付いたら、自分でも意味がわからないことを口走って、偉央(いお)に驚いた顔をさせていた。 ***  マンションでの一件があったからだろうか。  偉央(いお)結葉(ゆいは)の離婚は、ふたりの協議に(そう)が同席する形で割とすんなり進んで。  偉央(いお)結葉(ゆいは)に財産分与とは別に慰謝料を上乗せすることを提示してきた。  結葉(ゆいは)が、偉央(いお)のモラハラやDVで数年間苦しめられたことは明白だったから。  だけど結葉(ゆいは)偉央(いお)が提示した金額が相場より大きすぎることに渋って、そこの話し合いに一番時間を要した感じだった。 「絶対にっ。以前送っていただいたこの小切手の金額もそこから差し引いて下さいね?」
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