36.終止符

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***  離婚届を提出して、さあ帰ろうと車にエンジンをかけたところで。 「(そう)ちゃん。私ね、偉央(いお)さんのご両親に……子供が産めない嫁は要らないって言われちゃった……」  結葉(ゆいは)がポツンとつぶやいた。 「えっ。――何だよそれ。いつの話だ⁉︎」  そんなの初耳だった(そう)だ。  思わず「いつ」とか責めるみたいに問いかけてしまって。  グッとハンドルを握りしめて、心の中に渦巻く激情を何とか逃そうと頑張る。 「――ちょっと前に。その……向こうの親御さんから私の携帯に電話がかかって……きたの」  結葉(ゆいは)山波(やまなみ)建設宛に偉央(いお)からの荷物が届いてすぐ、偉央(いお)と離婚する様になるであろうことは伏せたまま、義理両親に連絡先が新しくなった旨を知らせたらしい。 「教えるかどうか迷ったんだけどね、キッズ携帯(前の番号)は通じないから……ご心配お掛けしちゃうかなって思って。それで――」 「だからってわざわざ」 「うん。(そう)ちゃんの言いたい事も分かってるつもり。だから今まで言えずに黙ってたの。ごめんなさい」  しゅんとする結葉(ゆいは)に、(そう)は小さく吐息を落とす。
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