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離婚届を提出して、さあ帰ろうと車にエンジンをかけたところで。
「想ちゃん。私ね、偉央さんのご両親に……子供が産めない嫁は要らないって言われちゃった……」
結葉がポツンとつぶやいた。
「えっ。――何だよそれ。いつの話だ⁉︎」
そんなの初耳だった想だ。
思わず「いつ」とか責めるみたいに問いかけてしまって。
グッとハンドルを握りしめて、心の中に渦巻く激情を何とか逃そうと頑張る。
「――ちょっと前に。その……向こうの親御さんから私の携帯に電話がかかって……きたの」
結葉は山波建設宛に偉央からの荷物が届いてすぐ、偉央と離婚する様になるであろうことは伏せたまま、義理両親に連絡先が新しくなった旨を知らせたらしい。
「教えるかどうか迷ったんだけどね、キッズ携帯は通じないから……ご心配お掛けしちゃうかなって思って。それで――」
「だからってわざわざ」
「うん。想ちゃんの言いたい事も分かってるつもり。だから今まで言えずに黙ってたの。ごめんなさい」
しゅんとする結葉に、想は小さく吐息を落とす。
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