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「婚姻中はとても良くしてもらっていたの」
さっきの結葉の口ぶりではしょっちゅう電話が掛かってきていたようだし、そうなのだろう。
実際、結葉は、偉央と二人きりで暮らすより、義父母と同居した方が気が楽なのではないかと思ったこともあるくらいだったの……とポロリと涙を落とした。
想は車を出そうと着けていたシートベルトを外して、助手席の結葉をギュッと腕の中に抱き寄せる。
「想……ちゃ?」
途端、腕の中で結葉が驚いたように小さくつぶやくのが聞こえた。
「お前は何も悪くねぇよ」
普通、結婚生活が破綻するとき、片方だけに百パーセント責任があるなんてことはない。
だけど、少なくとも偉央と結葉の場合は、旦那側にその割合が大きいのは明らかだ。
それに、結葉は美鳥への電話で言っていたじゃないか。
子供を持てなかったのは旦那が望まなかったからだ、と。
「なぁ結葉。子供が出来なかったのは旦那の意思だったって……」
――言わなかったのか?
そう続けようとした想に、結葉が腕の中でフルフルと首を振るのが分かった。
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