36.終止符

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「婚姻中はとても良くしてもらっていたの」  さっきの結葉(ゆいは)の口ぶりではしょっちゅう電話が掛かってきていたようだし、そうなのだろう。  実際、結葉(ゆいは)は、偉央(いお)と二人きりで暮らすより、義父母と同居した方が気が楽なのではないかと思ったこともあるくらいだったの……とポロリと涙を落とした。  (そう)は車を出そうと着けていたシートベルトを外して、助手席の結葉(ゆいは)をギュッと腕の中に抱き寄せる。 「(そう)……ちゃ?」  途端、腕の中で結葉(ゆいは)が驚いたように小さくつぶやくのが聞こえた。 「お前は何も悪くねぇよ」  普通、結婚生活が破綻するとき、片方だけに百パーセント責任があるなんてことはない。  だけど、少なくとも偉央(いお)結葉(ゆいは)の場合は、旦那側にその割合が大きいのは明らかだ。  それに、結葉(ゆいは)美鳥(ははおや)への電話で言っていたじゃないか。  子供を持てなかったのは旦那が望まなかったからだ、と。 「なぁ結葉(ゆいは)。子供が出来なかったのは旦那の意思だったって……」  ――言わなかったのか?  そう続けようとした(そう)に、結葉(ゆいは)が腕の中でフルフルと首を振るのが分かった。
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