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「何で……」
「私ね、偉央さんに首を絞められる前、『子供を作って、親子三人でやり直そう』って言われたの」
それは初耳だった想だ。
「は?」
思わずつぶやいて、結葉を抱く腕を緩めて彼女の顔をじっと見つめたら、結葉が泣きそうな顔をする。
「私ね、あんなに偉央さんとの子供が欲しかったはずなのに……言われた時、今更要らないのにって思ったの。だから――」
否定しなかったと言うのだろうか。
「けどそれは……」
「うん。言ってくれるのが遅すぎただけだってちゃんと分かってる。だって私、結婚してる時は偉央さんに何度も何度も『赤ちゃんが欲しい』ってお願いしてたもの。……きっとね、その頃に言われてたら心が動いてたと思う。――でも……あの時は。私、どうしても嫌だ!って思っちゃったの。それはまぎれもない事実だから」
想にはよく分からないが、その際偉央は結葉を引き止めるための足枷にするため、子供を欲しているようなことを言ったらしい。
そんな理由で子供を望む人と、幸せになれるとは思えなかったの、と結葉が悲しそうに微笑んだ。
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