36.終止符

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「何で……」 「私ね、偉央(いお)さんに首を絞められる前、『子供を作って、親子三人でやり直そう』って言われたの」  それは初耳だった(そう)だ。 「は?」  思わずつぶやいて、結葉(ゆいは)を抱く腕を緩めて彼女の顔をじっと見つめたら、結葉(ゆいは)が泣きそうな顔をする。 「私ね、あんなに偉央(いお)さんとの子供が欲しかったはずなのに……言われた時、今更要らないのにって思ったの。だから――」  否定しなかったと言うのだろうか。 「けどそれは……」 「うん。言ってくれるのが遅すぎただけだってちゃんと分かってる。だって私、結婚してる時は偉央(いお)さんに何度も何度も『赤ちゃんが欲しい』ってお願いしてたもの。……きっとね、その頃に言われてたら心が動いてたと思う。――でも……あの時は。私、どうしても嫌だ!って思っちゃったの。それはまぎれもない事実だから」  (そう)にはよく分からないが、その際偉央(いお)結葉(ゆいは)を引き止めるための足枷(あしかせ)にするため、子供を欲しているようなことを言ったらしい。  そんな理由で子供を望む人と、幸せになれるとは思えなかったの、と結葉(ゆいは)が悲しそうに微笑んだ。
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