36.終止符

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 (そう)は自分の気持ちを持ち上げる意味も込めて、結葉(ゆいは)にそう持ちかけてみた。  思えばマトモなデートの誘いは、結葉(ゆいは)をあのマンションから救出した日以来だ。 「映画?」  夕飯後、リビングの片隅で本を開いて、一人ぼんやりとしていた結葉(ゆいは)が、ゆるゆると(そう)の方をふり仰ぐ。  さっきから、結葉(ゆいは)が手にした本のページを全くめくっていないことを、(そう)は知っていた。 「うん。前に観に行った時に『面白そうだな』って話したパニックものの映画があっただろ? あれ、昨日から公開になってんだよ」 「そうなの?」 「しかも4DX3D(フォーディーエックススリーディー)だ」 「本当っ⁉︎」  前回連れて行った際、結葉(ゆいは)は体感型の上映システムをとても気に入っていたから。  あれに連れて行けば、少しは気が晴れるかな?と思ったのだが、思いのほか食いついてきてくれて、(そう)はちょっと驚いてしまう。 「前行った時、楽しかったもんな?」 「うんっ! すっごく!」  久々に結葉(ゆいは)が心から笑うのを見た気がした(そう)だ。  単純だけど、自分もそれだけで物凄く嬉しくなる。
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