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想は自分の気持ちを持ち上げる意味も込めて、結葉にそう持ちかけてみた。
思えばマトモなデートの誘いは、結葉をあのマンションから救出した日以来だ。
「映画?」
夕飯後、リビングの片隅で本を開いて、一人ぼんやりとしていた結葉が、ゆるゆると想の方をふり仰ぐ。
さっきから、結葉が手にした本のページを全くめくっていないことを、想は知っていた。
「うん。前に観に行った時に『面白そうだな』って話したパニックものの映画があっただろ? あれ、昨日から公開になってんだよ」
「そうなの?」
「しかも4DX3Dだ」
「本当っ⁉︎」
前回連れて行った際、結葉は体感型の上映システムをとても気に入っていたから。
あれに連れて行けば、少しは気が晴れるかな?と思ったのだが、思いのほか食いついてきてくれて、想はちょっと驚いてしまう。
「前行った時、楽しかったもんな?」
「うんっ! すっごく!」
久々に結葉が心から笑うのを見た気がした想だ。
単純だけど、自分もそれだけで物凄く嬉しくなる。
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