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かがみ込んで結葉の顔の横へ唇を寄せると、熱源みたいになってしまった彼女の耳へ、優しく言葉を投げかける。
「あっ、やだっ。想ちゃ……。それ……くすぐったいっ」
途端、結葉が堪らないみたいに白くほっそりした手指で耳を隠そうとするから、その手首を捕らえて阻止すると、「ほら結葉。やめさせたいならこっち向けって」と、わざと耳に吐息を吹きかけるようにして促した。
逃げ場を失った結葉が、観念したようにオロオロと想の方を見上げてくる。
「ん。やっぱお前は世界一可愛いな、結葉。そんな美人なのにいつまでも縁を切った人間のことでクサクサしてんの、もったいねぇと思わねぇか?」
もうかれこれ一週間になるのだ。
「お前が気持ち切り替えんのが下手くそだってぇのはよく知ってる。――けどさ、そろそろ他のことで思い悩んだって……きっと、バチなんか当たんねぇぞ?」
そこで、想は両手のひらで結葉の両頬をギュッと挟み込むと、
「なぁ、結葉。どうせ考えるなら俺とのことにしとけ。その方が絶対実りあんだろ」
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