37.それぞれの再出発

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 (そう)を諦めるためにした偉央(いお)との見合いだったけれど、結葉(ゆいは)の失恋の痛みを癒してくれたのは、紛れもなく偉央(いお)だったのだ。  結葉(ゆいは)偉央(いお)のことを確かに愛していたし、大好きだって思っていた。  一時は(そう)よりも好きになれたと思えたから結婚したのだし、家族として偉央(いお)のそばにいて、偉央(いお)のことを大切にしたい、しなくちゃいけないと思っていた。  だからだろうか。  (そう)の気持ちに応えようと思うたび、偉央(いお)の「結葉(ゆいは)、お願い。帰ってきて?」という言葉が脳裏に蘇ってきてギュッと胸を締め付けられるのは。  その痛みは、恋心とはもちろん違うと断言出来る。  そんなものは辛い結婚生活のなかで、徐々にすり減っていって、偉央(いお)の元を去るころには消失していたはずだから。  あえて言うならば〝家族としての情〟なんだと思う。  でも、その情が結構厄介で、結葉(ゆいは)が何かをしようと思うたび、心の片隅でモヤモヤと仄暗(ほのぐら)(くすぶ)るのだ。
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