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想を諦めるためにした偉央との見合いだったけれど、結葉の失恋の痛みを癒してくれたのは、紛れもなく偉央だったのだ。
結葉は偉央のことを確かに愛していたし、大好きだって思っていた。
一時は想よりも好きになれたと思えたから結婚したのだし、家族として偉央のそばにいて、偉央のことを大切にしたい、しなくちゃいけないと思っていた。
だからだろうか。
想の気持ちに応えようと思うたび、偉央の「結葉、お願い。帰ってきて?」という言葉が脳裏に蘇ってきてギュッと胸を締め付けられるのは。
その痛みは、恋心とはもちろん違うと断言出来る。
そんなものは辛い結婚生活のなかで、徐々にすり減っていって、偉央の元を去るころには消失していたはずだから。
あえて言うならば〝家族としての情〟なんだと思う。
でも、その情が結構厄介で、結葉が何かをしようと思うたび、心の片隅でモヤモヤと仄暗く燻るのだ。
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