737人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっ、な、んでそんなこと……」
「違うのか?」
もしそうじゃなければ、結葉がこんなに長いこと返事が出来ない理由は〝断りづらいから〟になってしまう。
想としてはそんな風には思いたくないのだ。
「違っ、……わ、ない」
明らかに一瞬「違う」と言おうとして。
だけど想の真剣な目を見た途端、良くも悪くも馬鹿がつくぐらい真面目で正直な結葉は、嘘がつけなくなってしまったらしい。
「――ごめんなさい、想ちゃん。私、本当に煮え切らないね」
言いながら、結葉がとても申し訳なさそうにしゅんとして謝るから、想としてはその先に踏み込みづらくなってしまった。
「……なぁ結葉。何がお前の気持ちに歯止めを掛けてんのか、俺に話してくんねぇか?」
結葉に気付かれないよう小さく吐息を落とすと、
「俺にはそれを聞く権利があると思うんだ」
想は、結葉をじっと見つめた。
***
「――場所、移してからでもいい?」
想の真剣な眼差しに、結葉はとうとう観念したのだけれど。
最初のコメントを投稿しよう!