37.それぞれの再出発

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 いま二人がいるのは山波家(やまなみけ)のキッチン。  たまたまみんな他所にいてこの場にいないけれど、いつ誰が来てもおかしくない共有スペースで話すのは、さすがにはばかられてしまった。  結葉(ゆいは)は、「出来れば二人きりで話せる場所に移りたいの」と、(そう)を不安に揺れる目で見上げる。 「だったら……少し見せたいモンもあるし、ちょっと外に出ないか?」  (そう)の部屋は公宣(きみのぶ)と純子の主寝室に近い。  かといって結葉(ゆいは)の部屋は(せり)の部屋の隣だったから。  夕飯後、各々が自分達の部屋で思い思いに過ごしている時間帯ではあったけれど、ゆっくり話すなら家を出た方が良いと、(そう)は判断したらしい。 「夜に勝手に家を出ても平気……?」  まだ、偉央(いお)の監視下にあった時の癖が抜け切らない結葉(ゆいは)は、オロオロと(そう)を見上げて。 「声掛けりゃ平気だろ」  一応同居している手前、何も言わずに抜け出すのは(そう)も良くないと思ったらしい。
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