37.それぞれの再出発

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 言うが早いか、(そう)は廊下に出て、階段下から二階に向かって声を張り上げた。 「なぁ! 俺、結葉(ゆいは)とちょっとドライブして()っから!」 「――こんな夜にぃ〜?」  (そう)の呼びかけに、(せり)がひょこっと階段の上から顔を覗かせて。  (そう)は「デートだよ、デート!」と、悪びれもせずに答えて、(せり)に意味深な表情をさせた。  (せり)は――と言うよりこの家の家族みんなが――(そう)結葉(ゆいは)が想い合っていることに、何となく勘付いていたりする。  なのに全然進展しないのは何らかの事情があるんだろうことも薄々察してくれている様で。 「とりあえず玄関、チェーンロックは掛けねぇようにしといて?」  (そう)が言うと、「了解」と(せり)が答える。 「父さんと母さんは?」 「多分映画鑑賞中。そんな音がしてるから」  公宣(きみのぶ)と純子が、夜に二人で映画鑑賞に夢中になるのは珍しいことではないので、(せり)の言葉に(そう)は小さく頷いた。 「ならさ、もし聞かれたら父さんたちにも言っといてくれるか?」 「OK(おっけぇ)〜♪」  (せり)が頭の上に両手で大きく輪を作るのを見届けると、(そう)は彼の背後で所在なく立ち尽くしたままの結葉(ゆいは)を振り返る。
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