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「じゃ、行くぞ」
言うなり、自分の手を取って歩き出す想に、結葉は「あのっ、行くってどこへ?」と問わずにはいられなくて。
「さっき言っただろ? ドライブだよ、ドライブ」
玄関先に掛けてあった車のキーを手に取ってニヤリと悪戯っ子のような笑みを向ける想に、結葉は(その目的地を知りたいのに)と心の中で抗議する。
声に出さなかったのは、きっと想が、結葉の言いたいことなんてお見通しのくせに、わざとはぐらかすような言い方をしていると分かっていたからだ。
***
夜のドライブに想が選んだのは、当然会社の軽トラではなく、想の愛車――黒のヴォクシーだった。
基本的に仕事以外で出かけるとき、想はこの車に結葉を乗せてくれるのだけれど、想が乗っているヴォクシーは七人乗り仕様らしい。
想一人や、結葉と二人だけだととても勿体無く思えてしまう。
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