37.それぞれの再出発

17/26
前へ
/848ページ
次へ
「何か広すぎて落ち着かないね」  今更のようにソワソワしながら結葉(ゆいは)が後部シートを眺めたら、「家族全員乗せるのにはいいんだけどな」と(そう)が言って。 「けどこの車おっきいから、(そう)ちゃんと(せり)ちゃん、公宣(きみのぶ)さん、純子さん。全員で乗っても余裕だね」  結葉(ゆいは)が三列目まであるシートを数えるようにして指を折ったら、 「俺はその中にお前も居たらいいとずっと思ってる」  と静かな声音で返された。 「わ、たしも……?」  ずっと好きだと言われ続けてきたのだから今更なのに、何だかそういう具体的な例を挙げられると、やたら照れてしまった結葉(ゆいは)だ。  それを誤魔化すみたいに「それでもまだ二席余っちゃうねぇ〜?」って努めて明るく笑ったら、「子供が出来たら足りなくなるんじゃね?」と言われて。 「こ、ども……っ?」  まだ(そう)の告白を受けるとも何とも答えられていないのに、(そう)がその先の未来を語るから、結葉(ゆいは)はどうしたらいいのか分からなくなった。
/848ページ

最初のコメントを投稿しよう!

736人が本棚に入れています
本棚に追加