735人が本棚に入れています
本棚に追加
そわつく気持ちを落ち着けたくて、窓外を流れる夜景を見つめながらオロオロと視線を彷徨わせたら、背後から更に、想の低められた声が被さってくる。
「なぁ結葉。ひとつだけ先に聞かせてくれ」
街灯などの前を通過するたび、外の明かりのせいで窓ガラスが鏡面になる。
そのたび、そっぽを向いていても想の顔が見えてしまうことに結葉はドギマギして。
「……なぁに?」
それを気取られないよう一生懸命心を落ち着けて短く答えたつもりだったけれど、声が震えてしまった気がした結葉だ。
「全部色んなことを取り払った上で純粋に答えてくれな?」
「……? ……うん」
「結葉は……俺のこと、男としてどう思ってる?」
さすがに結葉も、こんなに直球で聞かれるとは思っていなかったから。
「あ、あの……っ」
驚いて思わず想の方を振り返ったら、想は至極真剣な顔で前方を見つめていた。
運転中なのだから当たり前だと思う反面、いつもの想ならちらちらとこちらを気にしてくれるはずなのに、と思って、結葉は逆に落ち着かない気持ちにさせられる。
最初のコメントを投稿しよう!