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「想……ちゃ?」
別にどこかにたどり着いたというわけでもなさそうなのに急に車を停められて、結葉は戸惑って。
薄暗くてよく見えない窓外にじっと目を凝らしてハッとした。
「ここ……」
「お前が住んでたタワマンの真ん前だ」
結葉は時折窓の外に視線を流していたはずなのに、意識がすっかり想に持って行かれていたことに今更のように気付かされた。
いくら外が暗かったからと言って、抜けているにも程があるではないか。
「……な、んでこんな所に?」
「言ったろ? お前に見せたいものがあるって」
(まさかこのマンションの一室を買ったとか言う話じゃないよね?)
言われて、即座にそんなことを思ってしまった結葉だ。
確かにこのマンションはセキュリティ面ですごく充実しているし、住み心地は悪くなかったから。
でも……。
いくら何でもそれはないよね?と思って。
不安に瞳を揺らめかせながら想を見つめたら、「バーカ」と額を軽く小突かれた。
「――いくら何でもここに部屋を買ったとかそういう馬鹿なことは言わねぇから安心しろ」
想の言葉に、結葉はにわかに恥ずかしくなる。
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