735人が本棚に入れています
本棚に追加
もちろん、偉央の再婚や、彼の家族計画については結葉の勝手な想像に過ぎない。
でも――。
夜の闇に黒々と建っている家の形をした骨組みに、結葉は小さく吐息を落とさずにはいられない。
だけど結葉が独り言のようにこぼしたその質問に対して、想は何も答えてはくれなかった。
きっと、無駄な時間を過ごしたと嘆くのも、辛いこともたくさんあったけれど、きっとその全てに意味があったんだと前を向くのも、結葉の心ひとつだからだろう。
別に悲しいわけではないはずなのに、みしょう動物病院の一角にある、見慣れない光景を眺めていたら、我知らずポロリと涙がこぼれ落ちて。
結葉は慌てて目元をぬぐった。
「――なぁ結葉。お前は……これからどうなっていきたい?」
そんな結葉に、想が静かに問いかけてきて。
「……これ、から……?」
涙を拭いながら結葉が顔を上げたら、想が目尻の雫をそっと親指の腹ですくい取ってくれた。
そうしながら「俺は……お前と幸せになりたいって思ってんだけど……どうよ?」と、結葉の瞳を覗き込んでくる。
「わた、し……。私は――」
そこまで言って、さっき想に問いかけられた質問を再度思い出した結葉だ。
最初のコメントを投稿しよう!