37.それぞれの再出発

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 もちろん、偉央(いお)の再婚や、彼の家族計画については結葉(ゆいは)の勝手な想像に過ぎない。  でも――。  夜の闇に黒々と建っている家の形をした骨組みに、結葉(ゆいは)は小さく吐息を落とさずにはいられない。  だけど結葉(ゆいは)が独り言のようにこぼしたその質問に対して、(そう)は何も答えてはくれなかった。  きっと、無駄な時間を過ごしたと嘆くのも、辛いこともたくさんあったけれど、きっとその全てに意味があったんだと前を向くのも、結葉(ゆいは)の心ひとつだからだろう。  別に悲しいわけではないはずなのに、みしょう動物病院の一角にある、見慣れない光景を眺めていたら、我知らずポロリと涙がこぼれ落ちて。  結葉(ゆいは)は慌てて目元をぬぐった。 「――なぁ結葉(ゆいは)。お前は……これからどうなっていきたい?」  そんな結葉(ゆいは)に、(そう)が静かに問いかけてきて。 「……これ、から……?」  涙を拭いながら結葉(ゆいは)が顔を上げたら、(そう)が目尻の(しずく)をそっと親指の腹ですくい取ってくれた。  そうしながら「俺は……お前と幸せになりたいって思ってんだけど……どうよ?」と、結葉(ゆいは)の瞳を覗き込んでくる。 「わた、し……。私は――」  そこまで言って、さっき(そう)に問いかけられた質問を再度思い出した結葉(ゆいは)だ。
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