37.それぞれの再出発

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「私、(そう)ちゃんが……好き。お兄ちゃんとして、とかじゃなく、ちゃんと男の人として意識してる。――だから……私も……。(そう)ちゃんと幸せに……なりたい」  自分自身の心に問いかけるみたいに途切れ途切れ、己が発した言葉を噛み締めて。 「私……幸せになってもいいのかな……」  それでもやっぱり偉央(いお)の泣きそうな眼差しを、記憶の中からなかなか捨て去り切れない結葉(ゆいは)は、最後の最後でどうしても不安になってしまう。 「バーカ。いいに決まってんだろ」  だけど結葉(ゆいは)のそんな不安を、(そう)がすぐに払拭(ふっしょく)して〝幸せになってもいい〟のだと太鼓判をおしてくれるから。  結葉(ゆいは)は縋るような眼差しで(そう)をじっと見詰めた。  今までは薄暗がりではっきりと見えなかったけれど、対向車が通った瞬間ちらりと照らし出された(そう)が耳まで赤くしているのに気が付いて。 「(そう)ちゃん、ずっと待たせていてごめんね」  ついいつもの悪い癖で謝ってしまってから、ハッと気が付いて「ずっと待っていてくれて有難う」と言い直す。 「――ホントそれ……」  結葉(ゆいは)の言葉に困ったように眉根を寄せた(そう)にギュッと抱き寄せられて、すぐ耳元。「二人で幸せになろうな?」とポツンと落とされた結葉(ゆいは)は、今度こそしっかりと「うん」と泣きながら頷いた。
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