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「私、想ちゃんが……好き。お兄ちゃんとして、とかじゃなく、ちゃんと男の人として意識してる。――だから……私も……。想ちゃんと幸せに……なりたい」
自分自身の心に問いかけるみたいに途切れ途切れ、己が発した言葉を噛み締めて。
「私……幸せになってもいいのかな……」
それでもやっぱり偉央の泣きそうな眼差しを、記憶の中からなかなか捨て去り切れない結葉は、最後の最後でどうしても不安になってしまう。
「バーカ。いいに決まってんだろ」
だけど結葉のそんな不安を、想がすぐに払拭して〝幸せになってもいい〟のだと太鼓判をおしてくれるから。
結葉は縋るような眼差しで想をじっと見詰めた。
今までは薄暗がりではっきりと見えなかったけれど、対向車が通った瞬間ちらりと照らし出された想が耳まで赤くしているのに気が付いて。
「想ちゃん、ずっと待たせていてごめんね」
ついいつもの悪い癖で謝ってしまってから、ハッと気が付いて「ずっと待っていてくれて有難う」と言い直す。
「――ホントそれ……」
結葉の言葉に困ったように眉根を寄せた想にギュッと抱き寄せられて、すぐ耳元。「二人で幸せになろうな?」とポツンと落とされた結葉は、今度こそしっかりと「うん」と泣きながら頷いた。
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