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結葉が離婚届を役所の窓口に提出するのを見届けた偉央は、早々にその場を立ち去った。
今更「さよなら」を言うのも「今までありがとう」を言うのも変だと思ったし、何より愛しい結葉が、想に付き添われてどうこうしている姿を見たくなかったから。
一度は幼馴染みのあの男から結葉を略奪することに成功したはずだったのに、自分はどこで間違えてしまったのだろう?
偉央は山波想を見つめる元・妻の信頼しきった眼差しを見て、完全に自分の敗北だと悟ったのだ。
もうどんなに足掻いても結葉が自分の腕の中に戻ってくることはないだろう。
力尽くで閉じ込めたところで、彼女が反発して手の中からすり抜けていってしまう事は嫌と言うほど思い知った偉央だ。
そもそも偉央は結葉の身体だけが欲しいわけではなかったから。
不器用な愛し方しか出来なかったと認めるけれど、結葉の身体だけを支配するので満足だったことはただの一度もなかったと偉央は断言できる。
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