38.二人暮らし

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 女性ばかりの看護師たちの休憩室を覗くことは、いくら雇い主の偉央(いお)とは言えはばかられるので、用事でもない限りしたことはないのだが、加屋(かや)美春(みはる)がぽろりとこぼした話によると、昼食後はみんなして小さめのマイ枕などを持ち出して、思い思いに机に突っ伏して仮眠を取っていることが多いらしい。  そうやってちゃんと身体を休めてくれて、午後からも頑張ってくれるのだから有難いなと偉央(いお)は思って。  それと同時、結葉(ゆいは)には絶対に自分の手伝いはさせたくないとも思ったのを覚えている。  あの華奢な結葉(ゆいは)が何時間も立ちっぱなしの仕事をすると思うと心配で堪らないし、ましてや昼休憩時間、机に突っ伏して雑魚寝(ざこね)状態になるなどと言ったこと、どうしても想像がつかなくて。  スタッフたちには申し訳ないが、結葉(ゆいは)は家でのんびりしているのが似合うとずっと思っていた偉央(いお)だ。  外に出して、自分の預かり知らぬところで誰かに触れられたり見られたりするのは我慢ならない。
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