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かといって自分のそばに置いて動物病院の手伝いをさせることも無理だと思ったから。
偉央は結葉との三年間の婚姻生活の中、彼女を働かせず、専業主婦という形で家に縛りつけたのだ。
今となってはそれも結葉にとっては苦痛でしかなかったのかなと思って。
一体どう扱うのが正解だったのか、結葉と離婚した後になっても偉央にはさっぱり分からなかった。
結葉以外の女性ならば、偉央はここまで執着せずにいられたのだろうか。
歴代の彼女たちのことを思い浮かべてみても、結葉ほど自分の手の中に囲って外に出したくないと思った女性はいなかったから、きっとそうなのだろう。
***
今日は手術が数件重なってくれていてよかったなと思った偉央だ。
偉央は第一診察室に引きこもると、椅子に腰掛けてグッと両の拳を握りしめた。
ふと手元に視線を落とすと、未練がましく外し損ねたままになっていた結婚指輪が目に入って、偉央は小さく吐息を落とす。
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