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それはプロとしての矜持の成せるわざだったのだけれど。
元々、偉央は結葉の前を除いて、感情の起伏を余り表に出す方ではなかったし、淡々といつも通り飼い主やスタッフらへの応対も出来たと思う。
手術や往診の絡みで、午後の診察開始時間が夕方に設定されているのもあるかも知れないが、午後の受付終了時刻は十八時にしてあっても、何だかんだで全てを終えた頃には十九時半近くなってしまうのが常になっている『みしょう動物病院』だ。
毎日そんな感じなので、スタッフらの昼休みは原則二時間以上確保してあるし、シフト制で早番と遅番を入れ替える形で労働基準法に抵触しないようにしてはいるのだけれど。
実際のところ動物病院というのは結構ブラック企業だなと思ったりする偉央だ。
レジを閉めたりカルテの整理をしたり。表のドアにロックを掛けてブラインドを降ろしたり。
明日の業務が軽い清掃等だけですんなり始められるように、スタッフらがテキパキと閉院の支度をしてくれるから、かなり助かっている。
「お疲れ様でした。明日も宜しくお願いします」
タイムカードを押して皆が裏口から出て行くのを社交辞令とともに見送って。
偉央はさてどうしたものかと考える。
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