38.二人暮らし

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 マンションは案外すんなり買い手が付いて、月末までには全ての荷物を出して清掃業者を入れ、完全に明け渡すことになっている。  とりあえず、という形で結葉(ゆいは)の洋服類や靴などは運送会社に手配して、山波(やまなみ)建設宛に送るようにした偉央(いお)だったけれど。  彼女を監禁するに際して服などを取り上げた時にも感じていたけれど、それらを改めて箱詰めしてみると、偉央(いお)は三年間の結婚生活のなか、結葉(ゆいは)が本当にごくごく必要な分しか物を持っていなかったことに気付かされた。  化粧品ひとつとっても小さなポーチに全て収まってしまう程度。  服にしても――偉央(いお)が彼女を家から出さなかったことも関与しているんだろうが――大人が一人膝を丸めて入り込める程度の大きさの段ボール箱一箱に収まってしまって。  それに靴が数足あるだけ。  靴に関しては、夏仕様、冬仕様、フォーマル、カジュアルと用途に合わせて使い分けてはいたのだろうが、余りにも少ない持ち物の量に、偉央(いお)は正直愕然としたのだ。  アクセサリー類も、誕生日などに偉央(いお)がプレゼントしたものを含めても小さなケースにみんな収まりきってしまった。
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