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それは偉央同様、気軽に遊べる気兼ねのないセフレとしての気安さの上に成り立った好意だとずっと思っていた。
もしも今みたいに美春が本気をぶつけてきたら、偉央は絶対に彼女と男女の関係にはならなかったし、そんな面倒は御免だと骨身に染みていたから。
「美春、僕は――」
「本気の女は相手にしない、でしょう?」
グッと美春の身体を自分から引き剥がすようにして、偉央が断りを入れようとしたら、先んじて美春に封じられてしまった。
「だったら――」
(それが分かっていて何故美春は今更そんな真っ直ぐな思いを僕にぶつけてくるんだろう?)
「玉砕覚悟でぶつからなきゃ、いつまでも平行線だから」
まるで、偉央の心の中を見透かしたようなセリフと共に、美春にグイッと服の胸元を引っ張られて。
半ば強引に口付けられた偉央は突然のことに彼女を振り払うことも出来ないままに瞳を見開いて固まってしまう。
「この前偉央が奥様にしたあれこれを聞いて私、思ったの。偉央はすっごく好きな相手とはうまくいかないタイプだって」
キスを解くなり美春が偉央を食い入るような眼差しで見上げてそう宣言して。
「ねぇ偉央。私にしときなよ」
偉央は、何も言えずにそんな彼女をじっと見下ろすことしか出来なかった。
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