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その、怒ったような横顔をすぐ傍から見上げて、間近に見る想が耳まで真っ赤にしているのに気が付いた結葉は、(想ちゃんってば本当、どこまでも不器用なんだから)と、彼のことが愛しくて堪らなくなる。
「――きっかけとかあったの?」
そんな兄の様子なんてお構いなし。
芹がワクワクを隠しきれないと言った様子で問いかけてきて。
想は結葉にチラリと視線を流して、淡々とそれに答えた。
「風の噂に結葉の元旦那の再婚話を聞いたんだ。……それで結葉もやっと踏ん切りが付いたみてぇだったから遠慮なく口説かせてもらった。――そんだけの事だよ」
それ以前から想はずっと結葉に好意を伝え続けてくれていたけれど、結葉が彼の気持ちに素直に向き合えなかっただけ。
いま想が言ったように、偉央に新しい相手が出来たかも知れないという事実は、煮え切らなかった結葉の背中をぽんっと押してくれた。
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