38.二人暮らし

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***  結葉(ゆいは)の新しい勤め先――宮田木材で御庄家(みしょうけ)の新築工事に(たずさ)わった人から漏れ聞こえてきた話によると、偉央(いお)結葉(ゆいは)と離婚してそれほど経たずに職場の同僚と再婚したらしい。  しかも、どうやら奥さんになった女性は、既に身籠(みごも)っているらしく、建設中の家は生まれてくる赤ちゃんと夫婦三人の新居になる想定で建てられているとの事だった。  その話を聞いたとき、結葉はもちろん少なからずショックを受けたのだ。  自分との間には決して子を成そうとしなかった偉央が、他の女性とならすぐにそういう気持ちになれるんだと思ったら、自分の三年間は一体何だったんだろう?と悲しくなって。  それと同時、(だったら私ももう、偉央さんを置き去りにした罪悪感から解放されてもいいのかな?)とストンと気持ちが整った。  何より結葉はお母さんになりたい夢を捨てきれなかったから。  想ちゃんとなら、自分が夢見た〝普通の家庭〟が作れるんじゃないかと、そんなことまで思い描いてしまった。
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