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想はなるべく早いところ結葉自身が自力で自由に動き回れる足を、と考えているのだが、その反面ある程度は彼女の運転練習に付き合ってからでないと、その目論見を実行に移すのは危険だよな?とも思っている。
***
「んー、お腹いっぱいらねぇ〜」
タクシーの中。
若干呂律の回らないほわりとした口調で、スリスリとお腹をさすりながら幸せそうに微笑む結葉を見て、想も自然とほっこりした気持ちになる。
昼間は、長いこと出入りもせずに放置していたアパートへの引っ越し作業を頑張った想と結葉だ。
不在にしていた数ヶ月間、勿体無いからと止めていたガスや電気や水道といったライフラインを再開する手続きは前もって済ませてあったから、部屋の空気を入れ替えながら降り積もった埃などを軽く掃除して。
とりあえず、と〝いの一番〟にリビングの隅に落ち着かせたのは、ハムスターの雪日が入ったケージだった。
その後で山波家へ持ち出していた布団などの荷物をあらかた戻し終えてから、もう一度山波の実家に戻って純子主導のお別れパーティーへ参加した。
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