38.二人暮らし

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 偉央(いお)だって付き合っていた頃はそうだったことを思うと、この先に踏み込んだらもしかしたら、という怖さがゼロとは言えない結葉(ゆいは)だ。  でも――。  (そう)のことは幼い頃からずっと見てきて、誰よりも知っているつもりだったから。  想に限って言えば、関係性が変化したからと言って偉央のように豹変(ひょうへん)してしまうことは絶対にないとも思えて。  そもそも偉央は新婚旅行に行く前辺りから既に支配者としての片鱗(へんりん)を覗かせていた。  新婚旅行の準備に際して、偉央と一緒に水着を買いに行った時に感じた違和感をふと思い出した結葉(ゆいは)は、想との買い物ではそんなことを感じたことなんて一度もなかったことに思い至った。  逃避行の末に遠方のショッピングモールへ服を買いに行った時だって、想は結葉の好みに一〇〇パーセント寄り添ってくれたのを思い出す。  偉央は口調こそ柔らかかったけれど、水着だって結葉が選んだものを却下して自分の好みを押し付けてきた。  初めての営みにしても、結葉の戸惑いなんてお構いなし。ほぼ偉央の強引さに押し切られる形で最後までいってしまった気もして。  結葉はそういうこと自体初めてで、本当に性の知識に(うと)かったから、そんなものなのかなと思ってしまったけれど……。もしかしたら想とならもっと違った形で初体験が出来ていたのかも知れない。
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