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なのに真剣な眼差しで見つめてくる想の視線から、結葉はどうしても目を逸らすことが出来なくて、ソワソワと瞳を泳がせた。
「結葉」
そのまま一気に距離を削ってきた想に、間近から優しく名前を呼ばれて。
戸惑いに引き結んだ唇に、啄むような柔らかでたおやかな口付けが何度も何度も落とされる。
もどかしいほどに軽く皮膚が触れ合うだけのノックにも似たそれは、きっと現状に気圧されまくりの結葉の気持ちに寄り添った、想からの気遣いに他ならない。
なのにこんな、どこか子供騙しみたいな軽いキスを繰り返されているだけでも、結葉の身体はどんどん高められて熱くなっていくのだ。
ここ数年、偉央から殆ど前戯なんてなしに強引に身体を開かされてばかりだった結葉には、自分の反応を窺うように進められる想からの行為全てが、未知の経験過ぎて。
今からこんなで、いわゆる大人のキスに移行したら、どんなに気持ちよくされてしまうんだろう?
考えただけでゾクリと身体が期待に震えて。そのことに自分自身驚いてしまった。
「結葉、お願い、口開けて?」
何度目のバードキスの後だろう?
想が今までに見たどんな時よりも温和な目をして結葉を見詰めてきた。
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