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結葉の気持ちが自分と同じラインまで育っていないかも知れないと考えたら、滅多な行動は取れないと思ってしまった。
結葉のことが誰よりも大事だからこそ。
彼女の一生を左右するようなことだけに、あやふやなまま手を出したくはないのだ。
想が結葉の覚悟を探るみたいに彼女からじっと視線を逸らさずにいたら、
「――私ね、今まで男性からきちんと愛された経験が一度もないの」
ポツン、と。
結葉が今にも消え入りそうな声音つぶやくから。
想は瞳を見開いた。
「え、でも結葉。……お前、結婚……」
「……もちろん偉央さんは偉央さんなりに私を愛してくれていたんだと思う。でも……彼は私とは子供が欲しくない人だったから……」
前に結葉からチラリとそんな話を聞いたことがある想だ。
だけどこうしていざ彼女と愛し合おうという段になって改めてその話を聞かされると、妙な実感を伴うだけにかなり衝撃的で。
想は今更のように何と答えたらいいのか分からなくなってしまった。
しかも、風の噂で偉央には子供が出来たと聞いたばかりなのだ。
結葉はその話をどんな心持ちで受け止めたのだろう。
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