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そんな身勝手なワガママのために、結葉が自分との子供を心の底から欲していたことを分かっていながら、偉央はずっとその気持ちを無下にし続けたのだ。
――愛玩対象が欲しいなら、今まで通りペットが一匹いれば十分だろう?
そう勝手に結論付けて、寂しがる結葉に美春の家で生まれたハムスターを一匹当てがってやったのを思い出す。
あの時の結葉の悲しそうな顔を、偉央はことある毎に思い出しては何とも言えない気持ちになる。
結葉は偉央に逆らうことをしない女性だった。けれど、もちろん不満が全くないわけではなかったのだ。
長い年月をかけて結葉を力で押さえ続けて来た代償を、後に嫌と言うほど味わう羽目になった偉央だったけれど、その時は結葉が自分の横暴さを受け入れてくれることが愛の証のようで嬉しくもあって。
部屋の片隅、前妻に与えたハムスター雪日の両親にあたるゴールデンハムスターが二匹、結葉が使っていたケージより遥かに小さなケージふたつに分けられて、気持ちよさそうにスヤスヤ眠っている。
まん丸になっている白茶のふわふわのオスが毛玉、メスが毛鞠と言う名前だと美春から聞かされた。
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