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美春が、結葉ほどこの小さな生き物に依存していないように見えるのは、他に愛情を注ぐ対象がいるからだろう。
結葉にはきっと、無条件に愛せる対象が福助や雪日しかいなかったのだ。
無論、偉央のことだって愛してくれていなかったわけではないと思う。
だけど、いつしかそれがどんどんすり減って……。
結葉が偉央を見つめる眼差しに怯えが混ざるようになればなるほど、しぼんでいっているのが分かる自分への愛情を、これ以上子供なんかに奪られてたまるか、と偉央は意固地になった。
その思いが偉央のなかでどんどん膨らんでいったから。
偉央は結葉とは絶対に子供を作りたくないと頑なに拒んだのだ。
結葉が出て行ってしまった時、愛する妻が自分のことはアッサリと切り捨てたくせに、雪日は手放せなかったんだと思ったら、泣きたいくらいに辛かったのを覚えている。
美春が結婚に際して毛玉と毛鞠を連れてきてもいいか?と打診してきた時、ふと結葉と福助や、雪日のことを思い出した偉央だ。
だが、やはり愛情の差だろうか。
結葉の時ほど複雑な気持ちは湧いてこなくて。
「好きにしたらいいよ」と即答出来ていた。
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