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――それにしても、だ。
(縁なんてどこでどうなるか分からないものだな)
狂おしいほどに愛しくて堪らなかった結葉との離婚直後、偉央は何もかもどうでも良くなった。
傷心の余り自暴自棄になっていた心の隙間に潜り込むようにして、独身時代〝性の吐け口〟として付き合いのあった美春に誘われて、半ばほだされる形で避妊もせずに性行為に及んだけれど。
結葉との婚姻生活の三年間、絶対に生ではしないと心に決めていた反動だろうか。
美春が「奥様に出来なかったことを私にしたらいい」と言うから。
それで子が出来たらその時だと投げやりに思ってしまった。
そもそも相手が結葉でないならば、子供が出来る出来ないは偉央には大した問題ではなかったから。
元々結葉に出会う前は、条件の合う女性と結婚して、適当に家族ごっこをして跡取りを成せばいいと思っていた偉央だ。
美春が、「妊娠したみたいなの」と、どこか媚びるように自分を見つめて来た時、「じゃあ結婚しようか」とするりと口を突いていたのもそのためだ。
もしかしたらあの日の美春は、自身が妊娠しやすい時期だと分かっていて、あえて偉央をそそのかしたんじゃないかと思わなかったわけじゃない。
けれど今となってはそれもどうでもいいことだ。
元を正せば、そんな美春を子供ができても不思議ではない形で抱いたのは偉央自身なのだから。
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