40.それぞれの未来

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 実際結葉(ゆいは)の時みたいに妻を愛し過ぎていつもいつも気を張っていなくていい分、偉央(いお)としては凄く気楽に良い夫を演じられる。  きっと察しのいい美春(みはる)のことだから、偉央の思惑には勘付いているだろう。  自分は、夫からさして愛されてはいないし、子供ができた今だって、偉央から情愛を向けられてはいないのだ、と。  そうなると分かっていてもなお、美春が偉央の子を(はら)みたい、偉央の妻になりたいと望んでくれたのであれば、それもまた自業自得だと割り切れている部分もあるのかもしれない。  それに、このところ偉央はよく思うのだ。  人の気持ちは不変ではない。変化していくものだ、と。  偉央のことを愛してくれていたはずの結葉の心が、三年の年月をかけてすり減ってしまったように、今はまだ結葉に対して未練たらたらな偉央の愛情(きもち)が、これからの歳月で逆に美春に向かないとは限らないではないか。  偉央自身、そうなれたらいいと、目の中に入れても痛くないと思える程に愛しい娘を(いつく)しみながら、本気で思っていたりする。
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