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この、掛け替えのない存在を偉央にもたらしてくれた女性は、紛れもなく美春なのだから――。
*
「美春、僕に家族をくれて本当に有難う」
偉央は、切ないぐらいにギュッと胸を締め付けられるこの〝愛しい〟と言う感覚が、結葉以外にも持てたことに自分自身驚きながら、無意識。美春に礼の言葉を述べていた。
*
偉央からの突然の言葉に美春が心底驚いた顔をして。
「バカね。そんなのお互い様なのに」
と、瞳を潤ませる。
今、偉央が告げた〝家族〟には、まだ自分は含まれていないかも知れないと感じた美春だ。
「帆乃と三人で、ゆっくりゆっくり本当の家族になっていこうね」
願わくは、偉央が守りたい〝家族〟の輪の中に、自分も無条件に入れてもらえる日がきたならば。
夫の気持ちが未だ前妻に傾いているのは承知の上。
こんな切ない気持ちを背負わなければいけなくなったのは、偉央が最愛の女性と別れて弱り切っている時に、彼の心の隙間につけ込んだ愚かな自分への報いだと、今はまだ甘んじて受け入れられている美春だ。
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