40.それぞれの未来

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 この、掛け替えのない存在を偉央(いお)にもたらしてくれた女性は、紛れもなく美春(みはる)なのだから――。 * 「美春、僕に本当に有難う」  偉央は、切ないぐらいにギュッと胸を締め付けられるこの〝愛しい〟と言う感覚が、結葉(ゆいは)以外にも持てたことに自分自身驚きながら、無意識。美春に礼の言葉を述べていた。 *  偉央からの突然の言葉に美春が心底驚いた顔をして。 「バカね。そんなのお互い様なのに」  と、瞳を潤ませる。  今、偉央が告げた〝家族〟には、まだ自分は含まれていないかも知れないと感じた美春だ。 「帆乃(ほの)、ゆっくりゆっくり本当のね」  願わくは、偉央が守りたい〝家族〟の輪の中に、自分も無条件に入れてもらえる日がきたならば。  夫の気持ちが未だ前妻に傾いているのは承知の上。  こんな切ない気持ちを背負わなければいけなくなったのは、偉央が最愛の女性(つま)と別れて弱り切っている時に、彼の心の隙間につけ込んだ愚かな自分への報いだと、今はまだ甘んじて受け入れられている美春だ。
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