40.それぞれの未来

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 これまで散々抑えてきたのだから、もう少し偉央(いお)の心が癒えてからアタックすることだって出来たはずなのに、どうしてもあの時の自分は待てなかった。  モタモタしている間に偉央がまた、別の誰かとどうにかなってしまったらと思うと気が気じゃなくて。  気が付いたら半分襲うような形で偉央との間に既成事実を作ってしまっていた。  偉央への報われない片思いはずっと抱き続けてきた美春(みはる)だったけれど、彼が結婚してからはけじめとして、偉央にちょっかいを掛けたことは一度たりともなかったし、偉央が幸せである限り気持ちを伝えるつもりもなくて。  決して、院内の元同僚の一部に影でささやかれている様な不埒(ふらち)な関係ではなかったと断言できるし、そんなことを思われるのは、結葉(おくさま)しか見えていなかった偉央に対して失礼だから、やめて欲しいとも思っている。  ずっと好きだった相手を変わらず思い続けることが罪だと言われるならば仕方ないけれど、美春は前妻の結葉(ゆいは)に対して恥ずべき行いはしていないと、――少なくとも自分自身と生まれてきた娘に対して、胸を張って言える。
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