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偉央とは本当に、ただ職場の同僚として一緒に働いていただけ。
もちろん、同じ職場に元カノ未満のセフレが混ざっていると言うのは、結葉が知ったら気分のいいものではなかっただろう。
だから近くにいても美春は絶対にそんな素振りは見せなかったし、偉央にしてもきっと、美春をそう言う目で見たことは――少なくとも結葉と出会ってから別れるまで一度もなかったはずだ。
偉央の傷心につけ込んで後妻に収まった美春だったけれど、愛する男性の子供を産んでもなお、満たされない想いが尽きないのは、きっと偉央に愛されていないのを感じるからに他ならない。
でも……いつかきっと――。
娘を抱く偉央にそっと寄り添いながら、美春はそんなことを夢見て。
美春の淡い言葉になんて、絶対に反応してくれないと思っていた偉央が優しく微笑んで、「うん、そうだね」と返してくれて、美春は思わず息を呑んだ。
それは偉央も、自分と同じ気持ちを抱いてくれていると明言してくれたようにも感じられて――。
大好きな夫からの、そんな些細な言動が、物凄い前進に思えたと言ったら、神様に笑われるだろうか?
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