40.それぞれの未来

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 スタッフの中には離婚の直前までの数ヶ月間、偉央(いお)の様子がおかしくなっていたことに気付いていた者ももちろんいて。  少なくともそういう面々は、偉央の離婚が美春とは関わりがないと思ってくれている様だった。  偉央と同じ獣医師仲間である早川と佐藤はそちら側らしく、自分達夫婦に対して穿(うが)った見方をしていないのが分かるから、それだけでも随分と救われる気持ちがした偉央だ。  実際、不貞行為だと決めつけている側と、そうではないと思ってくれている側、どちらの意見が優勢になるかは偉央にも分からない。  下手をするとそう言うゴタゴタのせいで病院全体の士気が下がって、患者の来院数にも悪影響を与えるかも知れないとも思っている。  でも――。 「ねえ美春(みはる)。キミは僕に愛されていないと思っているかも知れないけれど。何があっても僕は全力でキミと帆乃(ほの)を守るつもりだから。それだけは覚えておいて?」  まだ。  美春に対して、結葉(ゆいは)に感じるような執着は感じていないけれど。  彼女は偉央の大切な娘の母親であり、今は偉央のたった一人の妻だから。  御庄(みしょう)偉央には一家の長として、今度こそ妻と娘(ふたり)を守って、家庭を壊さないように努める義務がある。
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