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大人二人で入るには少し狭いかな?と思ってしまうアパートのバスルームの中。
バスチェアに腰掛けた結葉の身体を、想がふわふわの泡で包み込んでくれる。
明るいところで異性とお風呂に入るだなんて、恥ずかしくて耐えられないと思っていたはずなのに、泡で見えなくなった安心感からだろうか。
ほんの少しずつ眠気がとろんとまぶたの上に降りてきて。
結葉はホワホワとした夢見心地の中、想にされるがままになっていた。
結葉の身体を一通り清め終わると、想がシャワーをかけて泡を洗い流してくれる。
その頃には恥ずかしさを押す形で眠気が優勢になりつつあった結葉だ。
「結葉、足首んトコ、アザになってんな」
「んー? ……あー、うん。大分……薄、くはなった……んらけ……ろね……」
心地よい気怠さと微睡のなか、結葉が途切れ途切れ、ちょっぴり呂律の回らない口調で何とか答えて。
少し前までは、その傷痕を見るたび、偉央にされた様々なことを思い出して怖くなっていたはずなのに。
偉央と縁を切ることが出来た今は、あのこと自体幻みたいに思えて。
もしかしたらそう思いたいだけなのかも知れないけれど、想に救出されてすぐの頃みたいに、一人にされても膝を抱えて震えるようなことはなくなった。
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