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「私ね、偉央さんには幸せになってもらいたいなって思ってるの。……その、もちろん色々あったし……一緒にいる間は本当に辛いことの方が多かったくらいだけど……。でも……それでも一時は夫婦だった人だから。どうせなら幸せでいて欲しいし、その……そうでないと困るなぁとも思ってて」
結葉の言葉に、想は思わず「困る?」と聞き返してしまう。
元旦那が幸せになろうとなるまいと、結葉には関わりのないことだろうに。
それなのに何故?と思ったのだ。
想の言葉に、結葉はほんの少し考えるような素振りを見せてから、「……うまく言えないんだけど……。そうでないと私が心の底から幸せになれない気がするの」と答えた。
恐らく結葉のことをよく知らない人間が聞いたなら『何だそれ?』と思うだろう。
だけど、結葉を幼い頃から知っている想には、それだけで十分伝わってきた。
逆に、ある意味とても結葉らしいなと思ってしまったくらいだ。
結葉は、自分が関わった相手が不幸なままでは、自分も決して幸せにはなれないと思ってしまうタイプだから。
現に、想の想いを受け入れてくれたのだって、偉央の再婚を知ったからと言う部分が大きいだろう。
『偉央さんが新しい暮らしを始めたのなら、私も前に進んでもいいのかな?』みたいな感じで。
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