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立地的にも、未だに夕飯を食べに毎晩実家に出入りしている身としては申し分ないわけで。
「結葉だってその方が楽だし安心だろ?」
結葉の勤め先の宮田木材にだって、今まで住んでいたアパートから通うよりよっぽど近いし、何なら徒歩圏内なのだ。
これまで通り仕事後に山波の実家に寄って義母の純子と夕飯作りをして、みんなで一緒に食卓を囲んでから、隣の小林家――想と結葉が住めばこちらも山波家になるのだが――に戻る。
二人が住めば、山波建設での家のメンテナンスも不要になるから。
「良い事づくめじゃねぇか」
何を反対する必要がある?とキョトンとする想に、結葉はかつて偉央にもそうしてもらいたかった事を思い出して淡く微笑んだ。
何から何まで前夫とは反応の違う想に、結葉は戸惑いながらも幸せを噛み締める。
「うん。想ちゃんが嫌じゃないなら……私はすっごくすっごく嬉しい」
子供の頃から過ごしてきた住み慣れた家だ。
そこにまた住めるのは、結葉にとってもこの上なく喜ばしい。
それに今更イヤだとゴネた所で、荷物の移動は完了してしまっている。
「想ちゃん、何から何まで本当に有難うね」
「だからっ。礼の必要なんてねぇっつーの」
どんなに想に苦笑されても、どうしてもそうせずには居られない結葉だ。
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