41. Epilogue

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 体温計を取りにリビングに入ったら、たまたまそこでくつろいでいたらしい純子がキョトンとする。  今日は(せり)は彼氏とデート、公宣(きみのぶ)は接待ゴルフで不在らしい。  結葉(ゆいは)たちより一週間ほど早く帰国していた山波家(やまなみけ)の面々だけど、それでもあちらも疲れているだろうし、と今回の引っ越しに関しては手伝い要請をしなかった(そう)と結葉だ。  出掛けられるくらい元気なら、手伝ってもらうようにしておけば良かった、と思ってしまった想だ。 「終わるわけねぇだろ。結葉がしんどいっちゅーから熱測らせてもらいに来ただけだ。……うちのはまだ荷解きしてねぇから」  体温計を手にした想の答えに、純子がにわかに眉根を寄せる。 「一昨日旅行から帰ってきたばかりなのにすぐお引っ越しとか……。そりゃあ身体に負担が掛かるわよ」  今日は帰宅後すぐの週末――土曜日だ。  帰国したのは木曜日だったから、昨日――金曜だけ普通に仕事をした想と結葉だったけれど。  体力お化けの(あなた)ならいざ知らず、線の細いゆいちゃんには過酷過ぎたのよ、と言った口ぶりで息子を睨む純子に、確かにその通りだったと反省しきりな想だ。 「ごめんな、結葉。俺、お前に対する配慮が足りてなかった」  素直に謝られて、結葉は逆に恐縮してしまう。 「しっ、仕方ないよ。来週にしちゃったら月が変わっちゃうし」
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