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体温計を取りにリビングに入ったら、たまたまそこでくつろいでいたらしい純子がキョトンとする。
今日は芹は彼氏とデート、公宣は接待ゴルフで不在らしい。
結葉たちより一週間ほど早く帰国していた山波家の面々だけど、それでもあちらも疲れているだろうし、と今回の引っ越しに関しては手伝い要請をしなかった想と結葉だ。
出掛けられるくらい元気なら、手伝ってもらうようにしておけば良かった、と思ってしまった想だ。
「終わるわけねぇだろ。結葉がしんどいっちゅーから熱測らせてもらいに来ただけだ。……うちのはまだ荷解きしてねぇから」
体温計を手にした想の答えに、純子がにわかに眉根を寄せる。
「一昨日旅行から帰ってきたばかりなのにすぐお引っ越しとか……。そりゃあ身体に負担が掛かるわよ」
今日は帰宅後すぐの週末――土曜日だ。
帰国したのは木曜日だったから、昨日――金曜だけ普通に仕事をした想と結葉だったけれど。
体力お化けの想ならいざ知らず、線の細いゆいちゃんには過酷過ぎたのよ、と言った口ぶりで息子を睨む純子に、確かにその通りだったと反省しきりな想だ。
「ごめんな、結葉。俺、お前に対する配慮が足りてなかった」
素直に謝られて、結葉は逆に恐縮してしまう。
「しっ、仕方ないよ。来週にしちゃったら月が変わっちゃうし」
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