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今月中に退去しなければ、更新料もお家賃もまた発生するのだから、想が急ぎたかった気持ちも分かる結葉だ。
「ホント貴方達は。私たちのこと、気遣って自分達でやるって言ってくれたんだろうけど……お昼からはお母さん、二人が何と言おうとお引っ越しの手伝い行くからね?」
もうじき昼食時だ。
「もちろんこのままお昼も一緒に食べるでしょ?」
私も一人で食べるのは味気ないものっ!と付け加えた純子に、結葉が「あ、だったら私、作るのお手伝いします」と体温計をわきの下に挟みながら言ったら母子して「ダメ」だと声を重ねられて睨まれる。
「ゆいちゃんは今すぐお布団に入ってしっかり眠ること! それがお仕事よ!」
そこでピピピッ……と体温計が検温終了の音を響かせて。
結葉が画面を見るよりも先に、結葉から体温計を取り上げた想が、「三七.二度か。やっぱ微熱があんじゃねぇか」とつぶやく。
「わ、私っ、元々平熱高いから」
結葉が慌てて言い募ったら「普段から三七度超えなのか?」と声を低められる。
「そ、そういうわけじゃ……ない、けど」
平熱は三六.五度前後。
嘘のつけない結葉は、グッと言葉に詰まって「そら見たことか」と、想と純子に二階に追いやられてしまう。
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