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そこでスマホに収めた検査薬の画像を想に見せる。
「想ちゃんには病院に行って色々ハッキリしてから報告しよう……って思ってたんだけど」
恐る恐る言ったら、今度は想が黙り込む番だった。
「……想、ちゃん?」
不安に思った結葉が想の名を呼んだのと、想が結葉のそばから離れて立ち上がったのとがほぼ同時で。
急に突き放されたみたいになって、泣きそうになった結葉に、想が間髪入れずに申し開きをする。
「結葉っ、マジでやべぇ。――俺、今すっげぇ嬉しくて……お前のこと、危うく力任せに抱きしめて潰しちまいそうだった!」
だから慌てて離れたのだと言われて、結葉はホッとするのと同様、そんな想のことが愛しくて堪らなくなって。
立ち上がって、すぐそばに立つ想にギュウッと力の限りしがみついた。
「想ちゃんになら私、思いっきり潰されて痛くされても平気だよ?」
想になら、思うさま抱きしめられて痛い思いをさせられても本望だなぁと思って。
偉央に「痛いのはイヤだ、やめて欲しい」と散々お願いしていたのを思い出した結葉は、〝今〟想に向かって真逆なことを思った自分に、心底驚いた。
でも、それはきっと――。
「馬鹿だなぁ、結葉。俺はお前を目一杯甘やかしたくて堪んねぇのに……痛くするとか有り得ねぇだろ」
想は、結葉がどんなにワガママを言っても、優しく包み込んでくれると知っているから。
一度目はうまく噛み合わなくて間違いだらけに思えた結婚生活だったけれど。
今度こそ私――。
結婚相手を正せました!
そう思って、結葉は自分に決してイヤなことをしてこない、大好きな想にもう一度ギューッ!としがみついた。
END(2021/03/19~2022/06/30)
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