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ロボットが私の言葉を認識し、モニターに私の質問が浮かび上がる。
やがて、
「その場でお待ちください。」
と、モニターに文字が浮かび、ロボットから声がした。
ロボットは半回転すると、ショップの奥へ戻っていった。
しばらくするとロボットは、手に何か箱のような荷物を抱えて戻ってきた。
「こちらが、"本物の"異世界転生装置です。どうぞ。」
これが‥異世界転生装置?
以外にあっさりと話が進んだことで、私は少し拍子抜けした。
とりあえずロボットから箱を受け取る。
受け取ったものの、どうしたものか。
本当にそんな送致が入っているのかも疑問だ。
「ここで開けてみて大丈夫ですか?」
後で変なことに巻き込まれても困る。
私は出来ればこの場で確認しようと思った。
ロボットは少し間を開けて、
「少しお待ちください。」
と答えると、メンテナンス用ロボットの方へ近付いていった。
接客用ロボットは、メンテナンス用ロボットに何か入力している。
やがてメンテナンス用ロボットは、あたかもICチップをメンテナンスするかのような動きを始めた。
その動きが始まるとロボットは戻ってきた。
「お客様のICチップをこちらにかざしてください。」
私は言われるがままに手を前に出した。
ロボットの手から光が照射される。
「‥これでお客様のICチップは故障しました。」
‥なるほど。
あのメンテナンスロボットがICチップをメンテナンスしている間は、一時的に監視状態を免れることになる。
その間はメンテナンスロボットを通じて間違いなくメンテナンスしているという情報が政府に報告されている。
この監視されていない状態は、ICチップのメンテナンスショップでしか起こり得ない状況だ。
だからここ、なのか。
私は合点がいった気がした。
「どうぞ、箱を開けてみてください。」
そうだった。
私はそそくさと箱を開ける。
中身は‥見たこともない装置だ。
‥輪っかのようなものの先に大きな丸い部分がある。
その輪っかと、ガードのフェイス部分だけを取り出したような装置がある。
なんだろうこれは。
本当にこれで異世界転生出来るのだろうか。
その場に立ち尽くしていると、ロボットのモニターに映像が流れ始めた。
かなり古い映像なのか、乱れていて見づらいが、どうやら人が映っているようだ。
すると、その人物が話し始めた。
「本物の異世界転生装置を手にされたあなたへ、それを用意したのは私です。今はちょうどB-00741。
あなたがその装置を手にするのはいつ頃でしょうか。」
B-00741?ということはこの映像はおよそ80年前に撮影されたということか。
「私は子どもの頃に移民してきました。その時に、この異世界転生装置をこっそりと持ち込みました。本来持ち物は厳しく制限されていましたが、私は子どもながらにこれだけは手放したくなかったのです。それからの出来事は全くの偶然でした。本来、異世界転生は、この装置で充分なのです。最近発売された異世界転生装置は、人類を人間同士の接触機会を減らし、部屋に閉じ込めるために政府によって作られたのです。」
異世界転生装置は政府によって作られた?
私はその意味がわからなかったが、重要なのはこの装置で異世界転生が出来るのかどうかだ。
まだモニターの人物は何事か話しそうだったが、私は無視して箱の中にマニュアルがないか探すことにした。
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