三 会議

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「さて、各事業部の進行状況を教えてくれ・・・。  提出した今期の計画に対し、デザイン企画の遅れはあるか?正直に知らせて欲しい」  タエは部長たちを見渡した。 「遅れはありません。全事業部が計画通り進んでます。予定より早く進んでいます」 「今月の(六月の)秋冬物(八月に販売スタート)の展示会の準備は?」 「準備完了です。順調です」  今月からは、十二月に行う春夏物(二月に販売スタート)展示会のデザイン企画の準備で忙しい時期だ。 「春夏物のデザイン企画の準備は、指示どおりに、できたか?」とケイ。 「はい。完了しています」  デザイン企画を八月と九月で完成して、十月と十一月にサンプル作成、十二月に展示会で商品化する計画だ。 「指示どおり、統括営業部長には、非採用の企画データを渡しておきました。  ファッションセンスが無いだけあって、企画データの優劣を理解できていなかった事が幸いでした。競合他社のイメージダウンになりました」  メンズの事業部長が安堵している。 「いいか、他社のイメージダウンを話すな。人を呪わば穴二つだ。  だが、他社のデザイン企画は気にしろ・・・」  タエは部長たちにそう言って睨みを効かせた。ちょっとでも甘い顔をすれば、自分たちの失敗と仕事を、部下に押しつける可能性がある。 「それから、部下たちが仕事をしやすいように、部長たちが動け。外部交渉もするんだ。  その上で、部下を叱咤激励しろ」 「わかりました・・・」 「メンズ事業部長。三洋テキスタイルとの取り引きはどうなってる?」とケイ。 「取り引きは、スーツ用ウール素材が主体だけです。その他はウールとの混紡です。  以前に比べて取り引き額は減ってます」 「ウール素材の在庫はあるのか?」 「いえ、メーカー在庫だけです」 「可能な限り、在庫を減らせ。  サラリーマンもカジュアル化が進んでるうえに、リモート勤務で紳士服専門アパレル企業も潰れる時代だ・・・」  ケイは何か考えている。 「三洋テキスタイルとの取り引きに、興味がありますか?」とメンズ事業部長。 「ああ、ウール素材は虫が好む蛋白質だ。在庫を抱えると保管手入れが難しい。そこが気になってる・・・」  ケイはそう言ってるが、タエはケイが何を考えているか気づいた。三洋テキスタイルのメーカー在庫にかこつけて、視察名目で、三洋テキスタイルへ行って、雨傘の君を探る気だ・・・。
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