一 相合い傘

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「嫌でなかったら、恋人みたいにくっついてください。その方が濡れない・・・」 「わかりました。これでいいですね・・・」  タエは傘の持主の男に寄りそった。雨脚が激しい。肩が濡れる。  男は左肩に掛けているショルダーバッグを右肩に掛けなおして、左手に持っていた傘を右手に持ちかえた。左手で傘を持っていたのでは腕がじゃまで、タエが寄りそえないと思ったらしい。 「バッグを右に持ってください。そのほうが濡れない」  タエはバッグを右手に持ちかえて男に寄りそった。それでも雨脚が激しくて左肩が濡れる。 「失礼しますよ・・・」  男の左腕がタエの背にまわって左肩に手が触れた。しっかり肩を抱かれている。  思ってもみない男の動作に、タエの胸の鼓動が高鳴っている。  この人はあたしが濡れないようにしているだけだ・・・。  そう思って自身を納得せるが、高鳴りは止まらない。  肩に触れているこの人の手に、私の鼓動が伝わっていないだろうか・・・。  そう思うタエの濡れた左肩に、男の手の温もりが伝わってきた。  この人の手は雨に打たれて濡れている。それを気にしないで私の肩を抱いている。  この人は優しいのだろうか?それとも、誰にでもこんな事をするのだろうか?
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